USDT(テザー)で海外資産を移転する手法:概要・メリット・リスク【2025年最新版】

USDT(テザー)の概要と技術的特徴

https://coincheck.com/ja/article/600USDT(テザー)は、米ドルと価格連動(ペッグ)させるよう設計された代表的ステーブルコインです。

ステーブルコインは「法定通貨など安定資産に価値を連動させる仮想通貨」であり、価値の急激な変動を避ける仕組みが特徴です。

テザーは2015年に発行開始された世界初のステーブルコインで、「1USDT = 1米ドル」を維持するよう運用されています。

その時価総額はステーブルコイン中最大で、取引量も多く海外暗号資産市場では基軸通貨的に使われています。

技術面では、USDTは複数のブロックチェーン上に発行されています。

元来ビットコイン(Omni Layer)上で始まりましたが、現在はイーサリアム(ERC-20)やトロン(TRC-20)、ソラナ、ビットコインキャッシュ、アルゴランド、Avalancheなど多様なネットワークに対応しています。

このため、トークンを別のチェーンに移す「ラッピング」の必要なく直接送金できるケースもあり、利便性が高いとされています。

資産移転手順:国内→海外ウォレットへのUSDT送金フロー

日本国内の暗号資産取引所では現時点でUSDTを直接取り扱っていないため、まず国内取引所でビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を購入し、海外取引所やDEXへ送金してからUSDTを購入するのが一般的です。具体的には以下のステップになります:

  • ① 国内暗号資産取引所で口座を開設する。
  • ② 取引所に日本円を入金する。
  • ③ 取引所でビットコインやイーサリアムを購入する。
  • ④ 購入した暗号資産を海外取引所(または自分のウォレット)に送金する。
  • ⑤ 送金先でUSDTを購入する。

このように、一度海外取引所や分散型取引所でビットコイン等をUSDTに交換してから送金先で再度USDTを法定通貨や別の暗号資産に換える流れが基本です。

送金には主にERC20(Ethereum)やTRC20(Tron)といったネットワークが使われ、数分以内に完了することが多いです。

他の手段(銀行送金・金地金・海外口座)との比較

USDT送金と従来手段を比較すると、送金速度やコスト、為替リスク、追跡性に大きな違いが出ます。たとえば銀行の国際送金(SWIFTなど)は、送金先の地域や銀行によりますが通常数日~1週間かかり、送金手数料や為替スプレッドなどで数%のコストがかかります。一方、USDT送金はブロックチェーン上で数秒~数分で承認され、取引手数料もネットワークによりますが少額(多くの場合数十セント以下)で済むことが多い。

また、従来の送金では必ず通貨交換が伴いますが、USDTをドルペッグのまま利用すれば為替変動リスクをある程度回避できます。

ただし、最終的に現地通貨で換金する場合は為替リスクは残ります。

金地金の場合、物理的搬送には数日~数週間を要し、保険・運搬費などがかかる上、金価格自体の変動リスクもあります。海外口座を利用する場合には現地銀行口座の開設が必要で、開設できない国や追加コスト、口座維持手数料などが発生します。

取引の追跡性では、銀行送金はKYC(本人確認)された記録が確実に残るのに対し、USDT送金はブロックチェーン上に公開台帳が残るため、表面的には匿名性がありますが、Chainalysisなどの分析ツールで送金経路が追跡可能です。

銀⾏は決済ネットワークの中継銀行が手数料を取りフルKYC情報を保持するため(コルレス経路)、複数の中継があると手数料が累積し送金が遅延しやすいのに対し、USDTはこうした中継が不要である点がコスト・速度両面で優位です。

主な利点:送金スピード・為替回避・コストの低さ・365日送金可

USDTを利用する最大の利点は、送金の迅速性と低コスト性にあります。暗号資産のブロックチェーンは24時間365日稼働しているため、土日祝日を問わず瞬時に送金処理が可能です。

例えば、Solana上のUSDC送金では「10分以内で送金可能、手数料は1ドル未満」という例があります。また、Coinspaidによる比較では、ステーブルコイン送金は「数秒〜数分で決済(24時間365日)、1件あたり1ドル以下の手数料」であるのに対し、銀行送金は「1〜5営業日、平均6.2%程度の高い手数料」を要すると報告されています。

さらに、USDTは米ドルペッグなので為替変動が小さく、ドルを基軸に資産を保有することで円安リスク回避効果があります。

例えば将来の円安時にUSDTをドルとして保有していれば、円建て換算で資産価値を維持しやすいメリットがあります。ただし、現地通貨での決済時には最終的な為替取引が必要になる点は留意が必要です。

また、USDTの取引コストは従来の国際送金より圧倒的に低いです。金融機関を通す海外送金では中継銀行手数料や為替手数料で数千~数万円かかることもありますが、USDT送金は1件あたり0.1〜数ドル程度、場合によっては数十セントで済むことが多いです。

加えて、世界中どこへでもネット接続があれば送金できるため、海外口座がなくても手軽に資金移動できる点も利点です。

税務上のリスク:譲渡益課税・出国税・非居住者判定

税務面では注意点があります。日本の所得税法上、暗号資産の売買で得た利益は原則として「雑所得」扱いとなり、確定申告で課税対象とされます。

USDTを円や他の暗号資産に換えた際に生じる為替差益も課税対象です。なお、国税庁のFAQでは暗号資産は「その他の財産」に分類され、12月末時点の評価額を財産債務調書に記載する必要があるとされています。これらの指針から、USDTを含めた暗号資産の取引利益は課税対象となると解釈できます。

一方、2024年から導入された「国外転出時課税」(出国税)制度では、原則として1億円以上の一定有価証券を持つ居住者が国外転出する際に含み益に課税されます。しかし、専門家の解説によれば、現行法ではビットコインやその他の仮想通貨・ステーブルコインは対象資産に含まれず、含み益に対する出国税は課されません。つまり、現時点で仮に1億円分のUSDTを保有して海外移住しても、課税対象外となる見解です。

ただし、居住者判定には留意が必要です。たとえ日本を一時的に離れても、税法上「非居住者」と認められない期間は国内居住者とみなされ、海外で売却しても日本で課税される恐れがあります。

このため、移住や長期出張で日本を離れる際には、税務上の居住者・非居住者判断について事前に確認しておくことが重要です。海外送金にUSDTを使った場合でも、取引記録は残るため、国税当局から問い合わせを受けるリスクがある点には注意してください。

法的リスク:FATFトラベルルール・金融庁規制動向・Chainalysisによる追跡

法規制面では、FATF(金融活動作業部会)の「トラベルルール」が挙げられます。2023年6月施行の改正犯収法(2022年改正)により、日本でも暗号資産交換業者間で大口の取引($1,000相当超)時には送金者・受取者の本人情報を必ず共有することが義務付けられました。

これにより、たとえ個人間でUSDT送金を行っても、取引所を経由する場合は情報が提出され、匿名性が制限されます。現状では本人確認済みの取引所アカウント間での送金が一般的ですが、海外の非取引所ウォレット(アンホステッドウォレット)へ送金する際も同様の情報提出が求められる状況です。

また、日本の金融庁も暗号資産市場の監視を強化しており、ステーブルコインを含む暗号資産全般の規制整備が進められています。

例えば、ICO規制や仮想通貨交換業者の登録・報告義務強化などの改正が行われており、暗号資産自体への取引上限規制や利用者保護策が検討されています。

今後、USDTのようなステーブルコインにも「国外送金等調書」の対象拡大や、取引所に対するより厳しい審査・報告義務が適用される可能性があります。

さらなるリスクとして、Chainalysisなどブロックチェーン分析企業の存在があります。彼らは高度なツールでUSDTを含むブロックチェーンの送金履歴を追跡でき、マネーロンダリングの兆候を検出します。

実際、Chainalysisの調査によれば、ステーブルコインはマネーロンダリングの資金移動に多く用いられる一方、その発行元が摘発に協力して凍結措置を講じるケースも増えています。

こうした背景から、USDT送金を悪用しようとするとセキュリティロガーやKYC情報が解析されるリスクがあり、安心して匿名取引ができるわけではありません。

成功例・失敗例(資金凍結や税務否認事例など)

実際の事例では、USDTの送金自体が誤用とされて資金が凍結されたケースも報告されています。例えば2024年9月、テザー社は国際協力の一環としてマネーロンダリング疑惑のある1,850以上のUSDTウォレットを凍結し、総額約18億6000万ドルを押収したと発表しました。

このようにUSDTでも不審な資金移動が検知されれば、取引所アカウント凍結や資金没収の対象となり得ます。また、イギリス高等法院はUSDTを「法的な財産(property)」と認めており、裁判所命令による差押えが可能であると判示しています。

税務面では明確な公表事例は少ないものの、一般に「海外口座に資金を移しただけで課税が免除されるわけではない」とされます。

税務当局は海外資産の移動履歴を重視し、USDTへの換金を「資産の移動」とみなして譲渡益の計算対象に含める可能性があります。

過去の類似事案では、納税者が海外取引で生じた損失を国内申告で認めてもらえず、税務調査で否認された例もあります(非上場株式などの資産移動で問題化したケースなど)。USDTの場合も、細心の記録と透明性を保ちつつ税務処理を行う必要があります。

※本記事は情報提供を目的としており、投資・資産運用の助言を行うものではありません。

参考資料: 国税庁、金融庁、CoinDesk、Bloomberg、Chainalysis、PwC、EY など報道・レポートchainalysis.comcoincheck.comcoincheck.comcoinspaid.combitwage.comnta.go.jpshiodome.co.jpshiodome.co.jpfsa.go.jpchainalysis.comchainalysis.combravenewcoin.combravenewcoin.com

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