はじめに|「いくらの家が買えるか」は最大の悩み
住宅購入を考え始めたとき、多くの人が最初に悩むのが
「自分はいくらの家が買えるのか?」という問題です。
不動産会社では
「この年収なら〇〇万円まで借りられますよ」
と言われることが多いですが、実はこの言葉には大きな落とし穴があります。
それは、
「借りられる金額」と「無理なく返せる金額」は全く違う
という点です。
この記事では、金融初心者の方でも理解できるように、
年収別の「安全な住宅価格」の目安
住宅ローンの正しい考え方
将来後悔しない計算方法
をFPの視点でわかりやすく解説します。
結論|基準は「年収」ではなく「返済比率」
最初に結論です。
住宅購入で失敗しないために見るべき指標は、
年収ではなく「返済比率(返済負担率)」です。
返済比率とは?
年収に対して、住宅ローン返済がどれくらいの割合を占めるかを示す指標です。
年間返済額 ÷ 年収 × 100
安全ラインは何%?
金融機関の審査基準と、FPとしての安全基準は異なります。
銀行がOKとする基準
30〜35%(高いところでは40%)
FPとしての安全ライン
👉 25%以内(高くても30%まで)
なぜなら、銀行は「貸せるか」を見ており、
FPは「生活が破綻しないか」を見ているからです。
年収別|安全に買える住宅価格の目安
ここでは、
金利:1.0%
返済期間:35年
返済比率:25%
を前提に、目安を示します。
※あくまで「安全ライン」です。
年収400万円の場合
年間返済額:100万円
月返済:約8.3万円
借入可能額:約2,700万円
👉 物件価格目安:2,700万〜3,000万円
年収500万円の場合
年間返済額:125万円
月返済:約10.4万円
借入可能額:約3,400万円
👉 物件価格目安:3,300万〜3,700万円
年収600万円の場合
年間返済額:150万円
月返済:約12.5万円
借入可能額:約4,100万円
👉 物件価格目安:4,000万前後
年収700万円の場合
年間返済額:175万円
月返済:約14.6万円
借入可能額:約4,800万円
👉 物件価格目安:4,500万〜5,000万円
年収800万円の場合
年間返済額:200万円
月返済:約16.7万円
借入可能額:約5,500万円
👉 物件価格目安:5,000万〜5,800万円
「借りられる額」で買うと失敗する理由
不動産会社や銀行は、
「この年収なら〇〇万円まで借りられます」
と説明してくれます。
しかし、その上限で買ってしまうと、以下のリスクが高まります。
① 教育費が想像以上にかかる
子ども1人あたりの教育費は、
公立:約1,000万円
私立:約2,000万円
住宅ローンと教育費のピークが重なると、家計は一気に苦しくなります。
② 収入は一生同じではない
転職
病気・ケガ
育休・時短勤務
定年・再雇用
「今の年収が35年間続く前提」は、ほぼ成り立ちません。
③ 固定資産税・修繕費を見落としがち
住宅ローン以外にも、
固定資産税
修繕費(戸建て・マンション)
管理費・修繕積立金
といった「住み続けるコスト」がかかります。
自分でできる!正しい計算方法
ここからは、誰でもできる簡単な計算方法を紹介します。
STEP① 手取り収入を把握する
年収ではなく、手取り月収を基準に考えます。
例:年収500万円
→ 手取り月収:約33万円前後
STEP② 住居費は手取りの25%以内に
33万円 × 25% = 約8.2万円
👉 この金額に
住宅ローン返済
管理費・修繕積立金
固定資産税(月割)
すべてを含めます。
STEP③ 「共働き前提」で計算しない
共働き世帯でも、
出産
育休
介護
で収入が減る可能性があります。
どちらか一人の収入でも耐えられるか
これが安全な住宅購入の基準です。
よくあるNGパターン
以下に当てはまる場合は要注意です。
ボーナス返済ありでギリギリ
共働き前提で限界まで借りる
教育費を考えていない
老後資金は「何とかなる」と思っている
「今の家賃と同じだから大丈夫」と考える
住宅ローンは「今」ではなく、「未来の家計」で考える必要があります。
まとめ|正解は「少し余裕がある家」
住宅購入で本当に大切なのは、
・広さ
・立地
・新しさ
よりも、
👉 「安心して暮らし続けられるか」です。
年収の25%以内
将来の収入減も想定
教育費・老後資金も両立
この3点を満たす価格帯が、
あなたにとっての「本当に買っていい家」です。
住宅は人生で最も大きな買い物です。
だからこそ、「借りられる額」ではなく
「無理なく返せる額」で判断してください。
必要であれば、
あなたの年収・家族構成・働き方に合わせた
個々のライフプランの相談も承っております。