はじめに：なぜ「所得分散」が富裕層に有利なのか？
年収が高くなるほど税率も上がる日本の累進課税制度において、同じ所得でも「どう得るか」で手取り額は大きく変わります。
この仕組みを巧みに活用しているのが、いわゆる“富裕層”たちです。彼らは、ただ稼ぐだけでなく、「所得の種類」「所得の出どころ」「所得の分配先」をコントロールすることで、税負担を合法的に軽減しています。
この記事では、富裕層が実践している「所得分散」のテクニックを紹介し、一般の方にも活用可能な考え方をお伝えします。
1. 所得分散とは？基本の考え方
所得分散とは、所得を1人で集中して得るのではなく、複数の人（家族など）や法人に分散して所得を配分することで、全体としての税率を下げる手法です。
たとえば、年収2,000万円を1人で得る場合、最高税率は45％ですが、家族や法人に分配して各人の所得を低く抑えることで、実質の税率を抑えることができます。
2. 富裕層が実践している代表的な所得分散テクニック
（1）家族に役員報酬や給与を支払う
家族を自分の会社や事業の役員・従業員として登用し、給与を支払うことで、所得を分散できます。
▶︎ ポイント
- 実態のある業務であれば合法
- 配偶者・成人の子ども・親なども対象になる
- 青色申告専従者として届け出ることで、事業所得との損益通算が可能
▶︎ 注意点
- 実際の業務内容が必要（名義貸しはNG）
- 給与水準が市場相場から大きく乖離していると否認されるリスクあり
（2）法人を設立して所得を法人に帰属させる
個人の所得を法人に移し、法人税率で課税させるのが、富裕層に多いテクニックです。
▶︎ メリット
- 法人の実効税率は約23％前後（個人の最高税率より低い）
- 経費として使える範囲が広くなる（交際費・出張費・役員報酬など）
- 家族を役員にして報酬を配分することも可能
▶︎ 活用例
- 不動産所得 → 不動産管理法人を設立
- 資産運用 → 投資用法人で運用益を管理
- コンサル業 → 法人として契約することで経費計上の幅を広げる
（3）不動産の共有名義化（家族信託・贈与など）
不動産からの収益（家賃収入）を得ている場合、その不動産の所有者を複数人に分けることで、収入も按分され、所得分散につながります。
▶︎ 方法
- 夫婦や子どもに贈与する
- 相続前に共有名義へ変更
- 家族信託を活用して受益権を分散
▶︎ メリット
- 家族の課税枠をフル活用できる
- 相続対策としても有効
（4）資産管理会社の活用（いわゆる“ホールディングス化”）
資産を一括で管理・運用する**資産管理会社（ペーパーカンパニーではなく、実体あり）を設立し、配当や家賃収入、売却益などを法人で受け取ることで、個人の所得を圧縮します。
▶︎ 活用例
- 株式や不動産を法人名義で保有
- 利益を役員報酬として徐々に取り崩す
- 配偶者や子どもに株式を保有させ、将来の相続対策にも活用
（5）金融商品の活用による「所得の種類」分散
所得税では、所得の種類ごとに課税方法が異なります。
- 給与所得：累進課税（最大45％）
- 配当所得：総合課税or分離課税（20.315％）
- 不動産所得：経費が多ければ損益通算可能
- 譲渡所得（株・不動産）：分離課税、20.315％
富裕層は、給与ではなく配当や譲渡益で収入を得るスタイルにシフトしています。
所得の種類をコントロールすることで、実質の税率を大幅に下げることができます。
3. 所得分散における注意点とリスク
● 税務署の否認リスク
あまりにも形骸化した家族給与や、経費処理の不適切さがあると、税務調査で否認される可能性があります。
● 税理士・専門家の関与は必須
所得分散は法的にグレーな領域もあるため、経験豊富な税理士やファイナンシャルプランナーと相談しながら行うことが大切です。
● 贈与税・相続税にも配慮
家族への名義変更や贈与には、贈与税・相続税が発生する可能性があります。長期視点での対策が必要です。
4. 所得分散を一般人が活用するには？
富裕層ほどの資産や事業がなくても、次のような方法で「小さな所得分散」を始めることができます。
- 副業で青色申告して配偶者に給与を払う
- 家族名義の証券口座でジュニアNISAや新NISAを活用する
- 個人事業主として配偶者控除・扶養控除を最適化する
ポイントは、「制度を理解して、できる範囲で分散させること」です。
まとめ｜富裕層のように「稼ぎ方」を設計する時代
税金は「稼ぎ方」で大きく変わります。
富裕層は、稼いだ後ではなく「どう稼ぐか」「誰に所得を配分するか」「どの器で受け取るか」を先に設計しています。
所得分散は、単なるテクニックではなく、お金の流れをコントロールする力です。
この考え方を身につけることで、資産形成・相続・事業承継まで一貫性のある戦略が描けるようになります。
あなたも、自分なりの“ミニ所得分散”から始めてみませんか？
