「家族信託」ってなに?──新しい資産管理のカタチ
高齢化が進む日本で、近年注目されているのが**「家族信託」**という制度です。
「親が認知症になったら財産はどうなるの?」
「遺言だけで本当に安心?」
そんな不安にこたえる柔軟な仕組みとして、家族信託は2007年の信託法改正以降、急速に広まり始めました。
この記事では、家族信託の基本的な仕組み・メリット・他制度との違い・活用例まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
家族信託とは? ─ 信頼できる家族に資産管理を託す仕組み
家族信託とは、自分の財産を、信頼できる家族(受託者)に託して、決めた目的のために管理・運用・処分してもらう制度です。
たとえば、
- 親(委託者)が、
- 子(受託者)に、
- 不動産や預貯金などの管理を任せ、
- 将来の相続人(受益者)に利益を届ける
というように、三者の関係が成り立ちます。
家族信託の構成要素(登場人物)
役割 | 説明 |
---|---|
委託者 | 財産を託す人(通常は親) |
受託者 | 財産の管理・運用を任される人(通常は子など家族) |
受益者 | 財産から利益を受け取る人(通常は委託者自身やその配偶者) |
どんな場面で役立つ? ─ 家族信託の代表的な活用シーン
■ ケース①:認知症による財産凍結を防ぎたい
親が認知症になると、金融機関や法務局での手続きが一切できなくなり、不動産の売却やリフォーム、預金引き出しも困難になります。
✅ 家族信託を活用すると…
→ 親が元気なうちに子に財産の管理を託しておけば、認知症になってもそのまま財産管理を継続できます。
■ ケース②:遺言代わりに柔軟な資産承継をしたい
遺言では「誰に財産を渡すか」までしか決められませんが、家族信託では「二次相続以降の指定」まで可能です。
✅ 例:
- 「夫に遺した後、夫が亡くなったら長女に」などの二次受益者の指定が可能
■ ケース③:障がいのある子どもの生活支援に活用
親亡き後も、障がいのある子どもが安心して生活できるよう、子の生活費用を信託財産から定期的に支給するよう設定も可能。
家族信託と他制度との違いは?
比較項目 | 家族信託 | 成年後見制度 | 遺言 |
---|---|---|---|
活用タイミング | 元気なうちに契約 | 判断能力喪失後 | 死後に効力発生 |
財産管理 | 任意の管理者に託せる | 家庭裁判所が監督 | 相続人が分割協議 |
柔軟性 | 高い(細かな設計可) | 制限が多い | 二次相続指定は不可 |
管理コスト | 契約書作成費用など | 後見人報酬など | 遺言書作成費用 |
家族信託のメリット
✅ 1. 柔軟な設計ができる
- 相続の順番指定(二次・三次まで)
- 管理・運用・処分のルールも自由に決められる
✅ 2. 認知症対策になる
- 判断能力がなくなっても、受託者がそのまま管理継続可能
✅ 3. 遺言よりも実務的に有効
- 死後の不動産名義変更や金融機関の手続きがスムーズ
- 遺言ではできない財産管理も可能
注意点とデメリットも理解しておこう
⚠ 契約内容が複雑になる
→ 専門家(司法書士・弁護士・行政書士)に相談しながら契約書を作成する必要があります。
⚠ 受託者の責任が重い
→ 財産の管理ミスや不正があると責任問題に発展します。
⚠ 対応していない金融機関もある
→ 一部の銀行では信託口口座の開設が難しい場合もあり。
【まとめ】家族信託は「生前の安心」と「将来の希望」をつなぐ選択肢
家族信託は、従来の相続対策や成年後見制度の“すき間”を埋める、柔軟で実用的な資産管理の方法です。
- 親が元気なうちに家族と話し合い
- 専門家と相談しながら
- 家族の将来に備える
そのための一歩として、家族信託をぜひ検討してみてください。
【FP・専門家に相談を】
家族信託はオーダーメイドの制度。家庭ごとに設計の仕方が異なります。まずは信頼できる司法書士やFPに無料相談して、自分の家庭に合った活用法を探しましょう。